閉店、閉点、閉展

閉店、閉点、閉展

閉店、閉点、閉展  「一路多彩」も43回、いよいよ大詰め、できれば空に浮かび、水に漂い、地を穿つような3つの断章を添えて、ここに手向けて、流れを結びたい。  閉店・・  これまでにもお話ししたが、私はル・プチメックの今出 …

鼠輩(アウグストゥス万歳!)

鼠輩(アウグストゥス万歳!)

大車輪9 -鼠輩(アウグストゥス万歳!)-  オーストリアの作家ヘルマン・ブロッホ(Hermann Broch)の長篇『ウェルギリウスの死』(1945)をめぐるコラムシリーズもいよいよ今回が打ち止めとなる。ということで、 …

めくるめく六重奏

めくるめく六重奏

大車輪8 -めくるめく六重奏- 『ウェルギリウスの死』第3部より  ヘルマン・ブロッホの『ウェルギリウスの死』(1945)、今回も先月と同じところにとどまる。詩人である二人の友は去り、替わって少年リュサニアスとアジア生ま …

奴隷の祈り

奴隷の祈り

大車輪7 -奴隷の祈り- 『ウェルギリウスの死』第3部より  紀元前70年、ローマの詩人ウェルギリウスが生まれた。そして紀元前19年、51歳で世を去った。イタリア南部の港町、ブルンディシウム。  ヘルマン・ブロッホの長篇 …

二人の友へ

二人の友へ

大車輪6 -二人の友へ- 『ウェルギリウスの死』第3部より  前々回はヘルマン・ブロッホの長篇、その第4部「灝気——帰郷」から、絶え間なく相反するものを包摂しながら対象を描き続ける、この作品独自のダイナミズムを垣間見た。 …

『アエネーイス』を焼く

『アエネーイス』を焼く

大車輪5 -『アエネーイス』を焼く-  パンを焼く、炭を焼く、あるいは土を焼いても、陶磁器、煉瓦と、品物が出来上がる。  世話を焼く。世話をかける相手次第では、火傷はしなくても手を焼くことがある。ほかにも、焼餅を焼く。こ …

多様な、矛盾、より多彩

多様な、矛盾、より多彩

大車輪4 -多様な、矛盾、より多彩- 『ウェルギリウスの死』における形容  12月初めの週末、久しぶり京阪電車の特急で大阪に向かう。その往路で読んだ小さな思想誌のエッセイで、少し気になる一節に出会った。 「われわれの感覚 …

大車輪3- 文芸という文学 -

大車輪3- 文芸という文学 -

大車輪3 - 文芸という文学 - (11月に続いて「大車輪」シリーズに回帰する。今回もヘルマン・ブロッホと彼の代表作『ウェルギリウスの死』をめぐる。) 2007年、『子どもと話す 文学ってなに?』(現代企画室)を書き下ろ …

砂の言葉 ―エコラリアス―

砂の言葉 ―エコラリアス―

砂の言葉 ―エコラリアス―  今年6月公刊の『エコラリアス 言語の忘却について』(ダニエル・ヘラー=ローゼン 関口涼子訳 みすず書房)・・・すでに多くの書評があるだろう。それらを無視する形で不遜にも、自らの体験値に基づい …

大車輪2 綴る私・綴られる私

大車輪2 綴る私・綴られる私

大車輪2 - 綴る私と綴られる私から -  「おお詩人よ、あなたはダンテの作品をひっくり返し   サタンを上に置き、神の方へ下って行ったのだ。」                (ヴェラーレンの詩篇「シャルル・ボードレール …

大車輪1 -永くかけるところ-

大車輪1 -永くかけるところ-

大車輪1 - 永くかけるところ -  「初版までに『惡の華』創作にかけた歳月、15年。」         (ヴァルター・ベンヤミン『パサージュ論-Ⅱ ボードレールのパリ』より)  「大車輪」シリーズに戻る。8月、プロロー …

ゲバラの陰影

ゲバラの陰影

ゲバラの陰影  誰も疑わない休息の夜、ゲバラの孫が目覚めた。其はまやかしの光明にあらず、遠い陰影の真下から俄かにさ迷い出た男が、望まれし暗闇を静かに解き放つ。そこに包み隠された光の道筋を、読み進む者がなまめかしくも受け入 …

大車輪 -プロローグ-

大車輪 -プロローグ-

大車輪 -プロローグ-  グルグル回る車輪(wheel)とは多分に言葉の綾である。いや、回ったのは確かだけれどただの一度きりで、おまけに30年以上もかかっている。現実には三角形(triangle)と呼ぶのがふさわしいのか …

放蕩息子(The Prodigal Son)

放蕩息子(The Prodigal Son)

放蕩息子(The Prodigal Son) (コラム「一路多彩」も今回30回記念となります。ちょっと長めです。お付き合いください。) 「さて、彼がまだ遠くにあった時、彼の父親は彼を見て、断腸の想いに駆られ、走って行って …

ベーリングの熊さん

ベーリングの熊さん

ベーリングの熊さん  先月よりもっと遠い北に向う。出発点は北海道より少し南の「イーハトヴ」、だから列車は「銀河鉄道」だろうか・・・・このコラムの入口を飾る一面の濃紺、『新修宮沢賢治全集』(筑摩書房)の表紙だ。折々彼の作品 …

北の詩集に

北の詩集に

北の詩集に -山川精『哈爾濱難民物語』『届かぬ聲』-  ごくゆっくりとアイヌ関係の書籍を集めてきた。  きっかけは新谷行の『増補アイヌ民族抵抗史』(77 三一書房)と知里幸惠の編訳『アイヌ神謡集』(78 岩波書店)だった …

村八分にされた夜

村八分にされた夜

村八分にされた夜 私がお話する「村八分」とは、伝説的なロックバンドの名前である。    1973年の4月、村八分のフリーコンサートが京都大学西部講堂で開かれた。5月には前の広場で、赤テントの状況劇場が『ベンガルの虎』を上 …

記憶を新たに物語る

記憶を新たに物語る

記憶を新たに物語る(クルド文学短編集に寄せて)  先月お話しした『アナバシス』の巻3にはこんな一節がある。 「河を渡って西方に向う道は、リュディアとイオニアに通じ、山岳地帯を越えて北に向う道は、カルドゥコイ人の住む地域に …

アナバシスの伝えるもの

アナバシスの伝えるもの

アナバシス ΑΝΑΒΑΣΙΣ の伝えるもの  はるかな山のよく見えることがある。不意に先触れがなく、望みもいまだ遠く、霧また深く雨さえ消えやらぬのに、いやそれどころか、竜巻の気配が人びとに教え諭す暇も与えず、なぜかそっと …

やらとがとらやとわかるまで

やらとがとらやとわかるまで

やらとがとらやとわかるまで  物は高いところから低いところへ落下する。川も上から下へ流れる。そこに「中」を加えて人間社会の秩序に当てはめるや、たちまちややこしくなる。「上から目線」、「下々の声」、「中流意識」、などなど。 …