僕はここで、店を続ける

僕はここで、店を続ける

四十二杯目 僕はここで、店を続ける 夏に死んだ金魚は、秋に金魚草になるという。 キャンプ、フェス、海水浴、バーベキュー。夏にわくわくしなくなったのは、オヤジになったということか。 でも、オヤジになることを嘆く必要はない。 …

僕の使命

僕の使命

四十一杯目 僕の使命   雨や湿気の多い日が続くと、気分が落ち込む。イライラする。低気圧は人の心に少なからず影響を与える。 男は40代半ばで鬱になると誰かから聞いたことがある。本当だろうか。 仕事にやる気がでな …

僕は短い恋をした

僕は短い恋をした

四十杯目 僕は短い恋をした   「変わった人って好きよ。こんな世の中で、普通の顔して歩いてる人の方が、なに考えてるかわかったもんじゃないからね」……これは誰の言葉だっけ。なるほど、とても共感したのを覚えている。 …

僕は今年も掃除する

僕は今年も掃除する

三十九杯目 僕は今年も掃除する   桜の季節もいよいよ終わり、街は大型連休に向けて静かに色めきはじめる。遅咲きの桜が舞うのを見ると、二年前のあの日のことを思い出す。 「令和」という字をみたとき、綺麗な言葉だなと …

僕の卒業式

僕の卒業式

三十八杯目 僕の卒業式 仰げば尊し、和菓子の恩。 うさぎ美味し、かの山。 卒園式のあと、好きだった女の子と別れるのがつらくて、母の車でメソメソ泣いた。 「小学生になったらもっといい女の子にたくさん出会えるけん、泣くんじゃ …

不完全な僕の店

不完全な僕の店

三十七杯目 不完全な僕の店 人を傷つけたくないということは、つまるところ、自分が傷つきたくないだけだ。そのために溜め込んだ無意味なストレスを、人は「優しい」だの「平和主義」だのと正当化する。 でも、無理に傷つく必要はない …

僕のけだるいお正月

僕のけだるいお正月

三十六杯目 僕のけだるいお正月 新しい年を迎えると、日常を少しリセット出来る気がする。ほんとは何にも変わってないけど、ちょっと踏み出してみるにはいい機会。 踏み出すなら最初が肝心。一気に変わろうったってどうせ続かないし、 …

歌とみかんと僕の一年

歌とみかんと僕の一年

三十五杯目 歌とみかんと僕の一年 「歌」という字は好きだけど、「唄」という字は好きじゃない。違いを調べるてみると、「歌」は人が口を開けて歌っている姿を表したもので、「唄」は仏の功徳をほめたたえる歌とのことらしい。 いい歌 …

僕にとっての紫式部

僕にとっての紫式部

三十四杯目 僕にとっての紫式部 愛らしい実をたくさんつけた紫式部の枝を見ると、秋がやって来たんだなと思う。 人の記憶はあてにならないもので、いい想い出が実はつまんなかったなんてのはよくある話。だけど、忘れた記憶のなかに、 …

僕はこれから秋ごもり

僕はこれから秋ごもり

三十三杯目 僕はこれから秋ごもり 随分と蝉が少なかった夏にパンチを喰らわすように、台風が秋を連れてきた。店からの帰り、虫の音に耳をすましてみるけれど、ここいらではなかなか聴き取れない。 日本ではコオロギを鳴き声を聴くため …

僕が見上げる秋の月

僕が見上げる秋の月

三十二杯目 僕が見上げる秋の月 誰かに見られてる気がして窓の外を見ると、月と目が合うことがある。月が黙って話してる声が、聞こえてきそうな夜がある。 最近、スーパームーンやらブルームーンやら、騒ぎすぎだなと思う。何十年に一 …

三十一杯目 僕の実家の過ごし方

三十一杯目 僕の実家の過ごし方

三十一杯目 僕の実家の過ごし方 今年は異常に暑いけど、人生80年として、夏もあと40回程しか経験出来ないのかと思うと、ほんのちょっといとおしい。 ある晩、本を読んでいた僕は思わず顔をしかめた。「原爆記念館」という言葉を見 …

僕とタクシー運転手

僕とタクシー運転手

三十杯目 僕とタクシー運転手 「なんだ。必死に手を振ってるから、どんな急ぎかと思ったよ」 6歳から18年もの間、結核治療のため蓼科の山奥に入院していた志穂子は、一人で電車に乗るのも、タクシーに乗るのも、初めての経験だった …

僕の育った小さな町。

僕の育った小さな町。

二十九杯目 僕の育った小さな町。 ゲリラ豪雨、猛暑、台風、大雪、地震……そんなニュースを耳にするたび、日本は本当に暮らしやすい国なのだろうかと思ってしまう。 僕の地元が、ストレスオフ県ランキングで二年連続1位になった。同 …

僕が紫陽花を好きなわけ

僕が紫陽花を好きなわけ

二十八杯目 僕が紫陽花を好きなわけ 僕の実家の裏庭には、大きな紫陽花の木がある。勝手口を通るとき邪魔だけど、たくさん花をつけてくれるこれからの季節は楽しみだ。 紫陽花は好きだけど、花言葉は好きじゃない。色が変化するから「 …

二十七杯目 僕と桜と一周年

二十七杯目 僕と桜と一周年

二十七杯目 僕と桜と一周年 大量の桜の花びらは、いったい誰が掃除しているんだろう。目黒川にあらわれる花筏を見るたびに、人々の関心をよそに、ひとり別のことを考えてしまう。 昔からそうだった。映画を観ても、ドラマを観ても、素 …

僕の嫌いな蒸しパンの話

僕の嫌いな蒸しパンの話

二十六杯目 僕の嫌いな蒸しパンの話 昔から、晩ご飯の支度をする母と話をするのが好きだった。たまねぎを刻む音や、味噌汁の香りに包まれながら、部活のことや友達のことを話した。 あっちは背中を向けているから、いろんなことを話し …

梅の香りと僕の想い出

梅の香りと僕の想い出

二十五杯目 梅の香りと僕の想い出 部室から見える景色に菜の花が混ざり、梅の花が満開になるころ、僕の通っていた高校では、部活の先輩を送り出すパーティーが行われる。 全国大会目指して毎日必死で練習していたので、家族やクラスメ …

二十四杯目 僕が越える分水嶺

二十四杯目 僕が越える分水嶺

二十四杯目 僕が越える分水嶺 友達と集まれば恋の話ばかりしていた若者も、歳をとると健康の話をしはじめる。BARトーストのお客さんもご多分に漏れず、30半ばを過ぎた常連さんたちは、5キロ痩せたいと口にする。 お恥ずかしい話 …

僕の店の、よいお年を

僕の店の、よいお年を

二十三杯目 僕の店の、よいお年を しびれるような刺激や快感を求める毎日に、少し疲れてきたようだ。村上春樹さんが『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』や『1Q84』で、「歳を取ると少しだけでいいんです」と繰り返してい …