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第五回 本の並べ方を考える

京都にいくと時々堀部篤史さんと飲みに行きます。
なぜなら、堀部さんは知る人ぞ知る京都のちょっといい店をいろいろ知っているから。
堀部さんは河原町と丸太町の交差点からちょっと奥に入ったあたりに
昨年、書店誠光社を開業しました。
だから、彼は書店経営者ということになりますね。
この店を開く前は一条寺にある恵文社という書店の店長をしていました。
その本屋は堀部さんがつくるユニークな書棚で知られていたからご存じの方も多いでしょう。
僕自身も東京下北沢に本屋を開業して4年たつのですが、
本屋の棚の作り方のヒントを堀部さんにたくさんもらいました。

 

一人の本好きが本棚を作ると、完璧な本棚が完成してしまうと彼は教えてくれました。
一冊でも抜けると黄金比がくるってしまうような美しい本棚。
本棚としての完成度は高いけれど、
下手をするとお客が手を出しずらい本棚になってしまうこともあるそうです。
だから、恵文社ではどこの棚は誰の担当と決めず、
何人かのスタッフが同じ棚をいじる仕組みを採用していたのです。
自分の店B&Bもそのシステムにならってみました。
本屋は毎日売れた本を補充していかなければなりません。
だから本屋の棚は毎日ちょっとづつ変わっていくガウディの建築のようなものです。
どんな本を新たに足していくかで棚の印象はがらりと変わるのですが、
このシステムだと自分が入れたい本とは全く違う本を
他の担当者に入れられちゃうこともしばしば起こるわけです。
でも、みんなで作った棚は、誰かが欲しい本がある本棚になるから不思議。
街の本屋は地域のいろいろなお客さんのニーズにこたえる商売をしているわけで、
堀部さんからはそのやり方を教えてもらったのです。

 

誠光社の書棚の作り方は恵文社と違って、
堀部さんが中心に棚づくりをされている。
恵文社で出会った本とはまた一味違う本が欲しくなったりする。

 


月刊連載『僕と京都』毎月2日公開
prof_shima 嶋 浩一郎

1993年博報堂入社。スターバックスコーヒーなどで販売された若者向け新聞「SEVEN」編集ディレクター。02年から04年に博報堂刊『広告』編集長を務める。2004年「本屋大賞」立ち上げに参画。現在NPO本屋大賞実行委員会理事。06年既存の手法にとらわれないコミュニケーションを実施する「博報堂ケトル」を設立。

カルチャー誌『ケトル』の編集長、エリアニュースサイト「赤坂経済新聞」編集長。2012年下北沢に内沼晋太郎氏との共同事業として本屋B&Bを開業。

編著書に『CHILDLENS』(リトルモア)、『嶋浩一郎のアイデアのつくり方』(ディスカヴァー21)、『企画力』(翔泳社)、『このツイートは覚えておかなくちゃ。』(講談社)、『人が動く ものが売れる編集術 ブランド「メディア」のつくり方』(誠文堂新光社)がある。

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