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第二回 どう食べるか、それが問題だ

何を食べているかでその人が何者か分かると書いたのは「美味礼賛」の著者ブリア・サヴァラン。さすがに、そこまでできないまでも、やっぱり食事の仕方にはその人のキャラクターって出るもの。やはり。上品に食事をする女性を見ると、両親の教育がちゃんとしてたんだと感じるし。

京都の喫茶店花の木は天井や壁に長い長い昭和の時間が沁み込んだ、落ち着いた空間。低めの(ココがいい)クラシカルな椅子に真鍮のテーブル。柱時計がかかる壁にサイフォンのあるカウンター。薄暗い(ココもいい)店内に時間が流れて行く。そんな空間で淹れたてのコーヒーを飲みながら三月書房で手に入れた文庫本を読むのが好き。

ところで、この店に入ると気付くのがカウンターの奥に掲げられたセピア色のポスター。フランスの映画俳優ジャン・ギャバンだ。「現金には手を出すな」が一番知られているのかな?

実は、このポスターは高倉健がお店にプレゼントしたもの。健さんは京都で撮影があるとこの店をよく訪ねたそうだ。「高倉健インタヴューズ」という本の中で健さんはジャン・ギャバンという俳優にいかに影響を受けたか語っている。自分の大好きな俳優のポスターをプレゼントするなんて、花の木のことがどれだけ気に入っていたかが分かる。

健さんはジャン・ギャバンの演技を、どんな役をやっても同じだと語っている。それって大根なんじゃないの?と思ったりもするのだが、健さんが彼に惹かれた理由はモノを食べるシーン。あの健さんがワインを呑みパンを食べるフランス人の演技を見て、食べるシーンを研究したそう。

カウンターの前のテーブル席に坐ると、ポスターのジャンギャバンが自分を眺めているような位置になる。朝行くとバタートーストを必ず頼むのだが、かっこ良くトーストを食べる方法ってあるのだろうか?といつも考えてしまう。


月刊連載『僕と京都』毎月2日公開
prof_shima 嶋 浩一郎

1993年博報堂入社。スターバックスコーヒーなどで販売された若者向け新聞「SEVEN」編集ディレクター。02年から04年に博報堂刊『広告』編集長を務める。2004年「本屋大賞」立ち上げに参画。現在NPO本屋大賞実行委員会理事。06年既存の手法にとらわれないコミュニケーションを実施する「博報堂ケトル」を設立。

カルチャー誌『ケトル』の編集長、エリアニュースサイト「赤坂経済新聞」編集長。2012年下北沢に内沼晋太郎氏との共同事業として本屋B&Bを開業。

編著書に『CHILDLENS』(リトルモア)、『嶋浩一郎のアイデアのつくり方』(ディスカヴァー21)、『企画力』(翔泳社)、『このツイートは覚えておかなくちゃ。』(講談社)、『人が動く ものが売れる編集術 ブランド「メディア」のつくり方』(誠文堂新光社)がある。

好きなもの:ブルゴーニュワイン 地図帳 吸引式万年筆 時刻表 シングルモルト 新聞 年功序列とサラリーマン 歌川国芳 アヒルストア 小津安二郎 博士の異常な愛情 ウディアレン 鉛筆 檜のお風呂 ポストイット 僕は散歩と雑学が好き 神保町 マルセルラピエール アポロ計画 ラジオ 教育テレビ 京都