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音楽で再現する構成主義。

先月、Between The Wars期のアートについて書いたら丁度よくそんなアート性を強く感じるイギリスのバンドが現れた。Between The Warsは第一次と第二次世界大戦の時期のことで、西暦でいうと1910~1930年代にあたる。Between The Wars期にはロシア構成主義やキュビズム、アールデコというスタイルが生まれ、ネットもない時代にも関わらず世界中に瞬く間に広まり、グラフィックデザインやイラストレーションという新しい時代の造形表現も生まれた。日本では大正時代にあたるが、日本でも時差をほとんど感じさせないアールデコやモダンデザインを取り入れたポスターや広告物が多数作られていることに驚く。

本当に2020年に向けて本格的に約100年前の文化のリバイバルがあるのかもしれないな、などと思ってしまうタイミングの良さでこの時代のものが次々紹介されている。大規模なル・コルビュジエの展覧会が今月半ばまで東京で開催されていたけれども、それも建築と言うよりも、キュビズムに影響を受け彼が提唱したピュリスムという絵画スタイルの展示のボリュームが主であった。またこの時期のデザイン教育を支えたバウハウスもこのところ再び注目を集めているそうだ。

さてここまでバンドをすっかり置き去りにしてしまった…。多国籍メンバーからなるヴァニシング・ツインはイギリスを拠点に活動するバンド。バウハウスのドイツモダニズムや構成主義を強烈に感じる人たちだ。彼らの作品からオスカー・シュレンマーの衣装デザインやラースロー・モホイ=ナジの映像の影響を見いだすのは難しくない。アートワークや映像にロシア構成主義やドイツモダニズムを取り入れたバンドと言えば、フランツ・フェルデナンドが有名だ。あるいは古いところでドイツのクラフトワークなどもいるが、ヴァニシング・ツインが少し異なるのはそれらを記号的に取り入れるのではなく、表現のコアになっているところだろう。モホイ=ナジがかつて平面としての構成主義を立体で映像として再現したように、ヴァニシング・ツインのメンバーはさらに音楽で構成主義を再現しようと試みる。

僕の中でデザインと音楽は近いけれども、どこか距離のあるものとして見ていたけれども、こんなにも好きなデザインと音楽が一致するバンドが出現するとは思わなかった。コーネリアスがAUDIO ARCHITECTUREとして音楽を建築的に構築した展示をしていたけれども、ヴァニシング・ツインのこれもある意味、建築と音楽、あるいは映像の交差する表現なのだろう。今後すごく注目を集める分野の気がするから、今のうちから色々と調べて勉強しておかなければな。

 

今月の1枚:c_siphon36-2

Vanishing Twin「The Age Of Immunology」(Fire Records/2019)
https://youtu.be/384GsV2RCR0

 


毎月22日公開 月刊『片隅の音楽』
icon_siphon宮下 ヨシヲ
グラフィックデザイナー
Siphon Graphica(http://siphon-graphica.net/)主宰

1976年、愛知県豊橋市生まれ。グラフィックデザイナー、ブックデザイナー。高校生の頃より英米インディー音楽に傾倒し、大学在学中にZINE制作を始め音楽誌に音楽ライターとしてキャリアをスタート。自ら雑誌制作の全ての行程に関わりたいとデザインを学び出版社、広告デザイン会社を経て、2008年サイフォン グラフィカ設立。2013年浜松に事務所を移設。現在はブックデザインを主なフィールドとしながら、ショップなどのトータルデザイン、パッケージなども手がける。

イラストレーション:akira muracco(http://akiramuracco.me/top