bn_shirotsuki

でもやっぱり、白。

或る日、私の店のハンガーラックに掛かっている服が、白だった。

NEW WAY,NEW LIFEへオーダーした服はもちろん、kiamのヴィンテージもすべて白。
別にそれはいいのだけれど、白以外の服はお客様たちのもとへ旅立ったのに、白い彼らは残っている。
もちろん、白も少しずつ出ていったのだけれど、圧倒的に白が残っているのだ。

私はモノトーンやネイビーといったダークな色が好みだが、白は年中着ている。
どこかが白いってことが多い。
でも、なぜ人気がないのか?(うちの店だけなのかもしれないけれど)

思い切って白いワンピースを眺めていらした方に聞いてみた。
「白いワンピースはいかがですか?」
「とても素敵なんだけれど、勇気が出ない」
「勇気? 汚れるのが心配とか?」
「そうですね」
「でも白は汚れたら漂白してしまえばいいし、それでも汚れが気になれば、染め替えて違う楽しみが可能ですよ」
「ああ、それはいい案ですね。でも、何だか全身が白一色になるって、かなりインパクトがありませんか?」
え?
下手すればオールホワイトで、まっしろけっけな格好で歩いている私には、予想外な答えで一瞬返しに困る。
インパクトっていうのは、自分にとってなのか、社会的にってことなのか?
その人が言うには、真っ白でいる自分が自分で気恥ずかしいという。
「とても目立つでしょ?」といわれ、これまた考えたことがなかったので、返答に詰まる。
「どうなんでしょう? 自分にとって白がベーシックな色だから、目立つ色だと考えたことがなかったので」と答えながら、白は意外とベーシックじゃないのか? という疑問がムクリ。
いや、それよりも。
他人様からどう見られるかということを、私はあまり(ほぼ)考えずに生きていることを思い知る。
客観的に白い自分がどう見られているか? などと考えたことはない。
だって、白い服を着るくらいでひと様に迷惑はかからないだろう。
それぐらい、自分さえ快適であればいいじゃないか。
でも、白い服の人とすれ違っても、清々しいと思うことはあっても、「目立って格好悪い」と思ったことはない。
感覚の差なのだろうか?

日本では車の色は白が基本で、赤などは売れないし、下取り価格も落ちるのだとディーラーから聞かされたことがある。
「白が無難なんですよ」って、それは即ちベーシックってことだよね?
でも服になると、そうじゃないのか?

色彩心理学なんてものもあるぐらい、色が与える印象というものは人にとって大きい。
あるとき数人のSPと遭遇したことがあるが、全員ダークスーツで(しかも眼光が鋭い)威圧感は半端なかった。
「良い出会いを望んでいるなら、明るい色の服を着なさい」とアドバイスされたことがあるが、あれもあなどれない効果があるのかもしれない。
でも、白って最高に明るい色じゃないのかしらん? と思ったら、白には「潔癖、純粋」というイメージと共に、「頑固、正義」というものもあり、近寄りがたい印象も与えるそうだ。
私の場合、「頑固」なイメージを振りまいてそうだと妙に納得できた。
ちなみに、日本流行色協会による2019の色は、オレンジ。
令和元年を迎え、明瞭な意識で新しい未来に踏み出す、前向きなエネルギーを象徴する色なんだそうだ。

でも、やっぱり白が好きだ。
実は、若かりし頃はオールホワイトは無理だった。
理由は「絶対に汚す自信がある」からだったが、漂白してしまえ!と開き直ってからは、かえって白は便利な色だ。
しかし、ふと周りを見回してみると、部屋のインテリアにはほぼ白を使っていない。
白が好きだといいつつ、私も何でもかんでも白がいいわけではないらしい。
きっと、その人にとって心地よい白の在り方というものがあるのだろう。
白に心ひかれつつ、ちょっと手を伸ばせずにいる人にも、「そんな白を見つけに来てください」という気持ちを込めて、6月の店の展示は白がテーマ。

Something blue & white
白と一緒に、青も添えて、作家さんたちからいろいろな作品が少しずつ届く予定。
どんな白が届くだろう。
どんな青が添えられてくるだろうと、今から一番楽しみにしているのは私だ(やっぱり自分本位)

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夏らしく今回、初めて2名のガラス作家から作品が届く。
川崎和美さんのオブジェは、使えそうで使えない。使えなさそうで、使えるという微妙なフォルムが面白い。

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小川真由子さんも川崎さんと同じくパート・ド・ヴェールという手法でガラス作品を制作している。型を作りガラスの粉を仕込んで焼き、冷やし固めるなんとも手間のかかる作り方。独特のグラデーションが美しいが、薄く作るには高度な技術が必要。それだけに、彼女の作品を手にすると、スキルの高さを感じる。


著者プロフィール
月刊連載『或る日。』毎月20日公開
prof_shirotsuki内藤 恭子
ライター・編集などの仕事をしながら、不定期にオープンする<好事家 白月>を主宰。
https://www.instagram.com/shirotsuki_kyoto/