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第七回 洗濯物にこぬか雨

日本を代表する女性シンガーソングライターのお二人です。
二人はザ・ライバルとしてしばしば対比されてきました。
ユーミンはシティガールのポップな恋愛を描き、
中島みゆきは捨てられる女の恨み節を歌う、
そんなとらえ方が一般的でした。
なにしろ、ユーミンはバスルームの鏡に口紅でメッセージを残し、
中島みゆきはドアに爪でメッセージを残すわけですから。

松任谷由実が中島みゆきのことを
私がせっかく乾かした洗濯物を、
またじとーっとしめらせてしまう
こぬか雨のようと評したことがありました。
たしか、中島みゆきのコンサートのパンフレットに寄せられた
文章だったとおもいます。
さすが、ユーミン。いい表現ですよね。

こんな日本の風土を分け合う二人の世界に
どっぷりはまれる場所が京都なんです。
京都には、ユーミンだけ、中島みゆきだけが流れる店があるんです。

キャラメルママは河原町通からちょっと路地をはいったビルの中。
毎日ひたすらユーミンを流しています。
同店はピーナッツが食べ放題で、殻はそのまま床に捨てるスタイル。
こじゃれています。
過去の名曲の名を冠したカクテルも多数。
名前をみないでカクテルを飲んで、
そのイメージから曲名を当てる利きユーミンも楽しめます。

一方、きさらぎは木屋町の飲み屋街にあるスナック。
入口に「朝まで中島みゆきかけてます」という期待をそそる貼紙が。
薄暗い店内はカウンターだけの数名が座るともういっぱい。
中島みゆきの曲を聞くには最高の空間。

この前、初めてキャラメルママからきさらぎへのはしごを体験。
乾いた洗濯物が、こぬか雨に湿る実体験。
みなさんもいかがでしょう。

 


月刊連載『僕と京都』毎月2日公開
prof_shima 嶋 浩一郎

1993年博報堂入社。スターバックスコーヒーなどで販売された若者向け新聞「SEVEN」編集ディレクター。02年から04年に博報堂刊『広告』編集長を務める。2004年「本屋大賞」立ち上げに参画。現在NPO本屋大賞実行委員会理事。06年既存の手法にとらわれないコミュニケーションを実施する「博報堂ケトル」を設立。

カルチャー誌『ケトル』の編集長、エリアニュースサイト「赤坂経済新聞」編集長。2012年下北沢に内沼晋太郎氏との共同事業として本屋B&Bを開業。

編著書に『CHILDLENS』(リトルモア)、『嶋浩一郎のアイデアのつくり方』(ディスカヴァー21)、『企画力』(翔泳社)、『このツイートは覚えておかなくちゃ。』(講談社)、『人が動く ものが売れる編集術 ブランド「メディア」のつくり方』(誠文堂新光社)がある。

好きなもの:ブルゴーニュワイン 地図帳 吸引式万年筆 時刻表 シングルモルト 新聞 年功序列とサラリーマン 歌川国芳 アヒルストア 小津安二郎 博士の異常な愛情 ウディアレン 鉛筆 檜のお風呂 ポストイット 僕は散歩と雑学が好き 神保町 マルセルラピエール アポロ計画 ラジオ 教育テレビ 京都